第8章  西空の将来に向けて

当社は、ヘリコプターによる送電線パトロールを始めとする電力ライフラインの確保に直結する事業を基盤に、

地域社会に密着した様々な事業活動を展開しているところである。

当社が70周年を迎えるに当たり、事業の変遷などを改めて振り返ってみると、防災ヘリの受託、固定翼機からの撤退、

ドクターヘリの受託、奈多基地への移転など、それぞれの時代の変化に柔軟に対応し進化した結果が現在の西空の姿である。

一方、将来に目を向けると、「ドローン・空飛ぶクルマ」などの輸送や移動に関する様々な革新的サービスが登場することが期待されており、

ヘリコプターとの競合・棲み分けなど多大な影響を与えることが予想され、まさに大きな転換期に差し掛かっているといえる。

当社においても、その動向を注視しているところだが、操縦や整備などの技能が活かされ、むしろチャンスになると前向きにとらえている。

このような状況下において、今回、70周年の節目を迎えるに当たり、各室部から選抜された当社の若手社員により、将来のありたい姿を策定した。

若手ならではの斬新なアイデアとともに、新規事業、人材育成、地域貢献など幅広い分野で当社が進むべき方向性が示された。

今回のワーキングに参加したメンバーなど若手社員が中心となり、当社の未来を切り拓いてくれるものと期待している。

70年間にわたり進化し続けてきた当社だが、将来においてもその役割は変わらない。

技術の進歩や需要の変化に対応しながら、持続可能なサービスを提供し続けることで、

更なる進化を遂げ、ありたい姿実現に向けた課題に対応し、未来へ新たな一歩を踏み出すことを確信している。

 ありたい姿の策定

当社では2023年12月に創立70周年を迎えるにあたり、

今後の更なる飛躍を目指して「2030年のありたい姿」を策定するためのワーキンググループを立ち上げた。

この方針に従って、まずは全社員を対象としたアンケート調査を実施し、

社員それぞれが「2030年のありたい姿」について、それぞれの思いも込めて考えた。

また、今後活躍が期待されている若手社員を中心にワーキンググループメンバーとの対話を実施し、率直に意見交換を行った。

これらをもとに、ワーキンググループでは全9回の検討会を重ねて「2030年のありたい姿」について取りまとめを行い、

その結果について社員への素案、原案の意見照会、会議体でのオーソライズを経て、2023年12月、一応の完成版を策定した。

「2023年のありたい姿」におけるポイントは次のとおり。

まず、当社の存在意義として「事業」を通して社会に貢献していくことが挙げられる。

当社が今後も存在していくためには社会情勢に合わせて変化していくニーズを的確に捉えて、

価値のあるサービスを提供し続けることが必要である。

次に「事業」を継続していくためには「人財」が必要である。

変化していくニーズを捉え、価値のあるサービスを提供するためには広い視野を持ち新たな視点で考え、

かつ確かな技術力を持つ人財を育成していくことと合わせて、70年間で培ってきた伝統を未来へ継承していくことが必要である。

その上で、こうした人財が高いモチベーションを維持しながら業務に取り組むための環境についてまとめた。

また、事業を継続していく上で地域からの理解を得ることは必要不可欠であると同時に

地域と共に発展する地域に根差した企業でありたいという思いから「地域貢献」について整理した。

更に、地域の豊かな自然環境を守りたいという思いや、企業としての社会的責任を果たしていくために「環境」についても考えた。

今後、ありたい姿の実現に向けて中期経営計画へ反映し、

それぞれの業務単位が役割を認識しPDCAにより検証を繰り返すことで実現を目指していく。

以下、「2023年ありたい姿」の概要版を示す。

 人財育成

当社事業の基盤である人財については、業態変化対応、機種の増加、急激な若年化等により、計画的かつ効果的な育成を図る必要があるため、

人財育成の考え方を体系化し、育成及びライセンス・資格取得を計画的かつ効果的に進めていくことを目的として、

2021年8月16日に「人財育成基本方針」を制定した。以降、これに基づき全社の重要な取組みとして人財育成を進めている。

持続的な企業成長を図るため、従業員一人一人が能力を発揮する人事施策を整備し、

『すべての事業活動において安全を優先し、品質の維持と向上に努めてお客様・社会のニーズに応える人財』を継続的に育成している。

人財育成においては、組織力向上を踏まえた各人の能力開発・向上に向けて目標を明確化し、目標達成への取り組みを促すとともに、

社員が自発的に行動し、成果を出しやすい環境を整えて支援することが重要であり、

こうしたことから当社の事業展開に必要な各種スキルや知識を有する人財を継続的に育成するための方策として、「人財育成プログラム」を策定した。

人財育成プログラムでは総務、経理資材、営業、操縦、運航管理、整備の各業務遂行に必要な部門単位のスキル・知識を整理した「スキルマップ」を設定する。

従業員全員について、スキルマップをもとに対象者と上長が面談のうえ、育成目標を記した「育成計画書」を毎年作成し、

人財育成の PDCA のスパイラルアップを図り、計画的・効果的な人財育成を継続的に行っている。

 人事労務施策(働きやすい職場環境への取り組み)

近年「働き方改革」「ワークライフバランス」「従業員のエンゲージメント」などのワードを耳にする機会が増えた。

当社においても、これらに対応するため、いくつかの制度を導入している。

その制度の中でも「時間有給休暇」と「時差出勤(試行運用中)」の取得者が多く見受けられる。

子どもの送迎や役所の手続き、出退勤時の渋滞回避のために利用する従業員が多いようだ。

また、当社の働きやすい職場環境への取組みを社内外にPRするため、2023年9月に「健康づくり団体・事業所宣言」と

「働く世代をがんから守るがん対策サポート事業」、10月には健康保険組合への「健康宣言」、

11月には「子育て応援宣言企業」「介護応援宣言企業」「出会い・結婚応援事業」への登録を行った。

今後は「健康経営優良法人」や「くるみん認定」などの制度取得も行いたいと考えている。

これからも一人ひとりが安心して働くことができる環境づくりに力を入れ、

従業員をはじめとするステークホルダーから信頼される会社を目指していきたい。

 環境活動の取り組み

当社の環境活動は、2005年6月に環境管理の国際的な規格であるISO14001の認証を取得して活動を実施していたが、

2008年6月からはこの認証の更新を中止して、ISO14001に準拠した環境管理システムの構築を目指すことにした。

具体的には認証の維持よりも具体的な活動の実施を重視し、当社として法的に求められる環境管理活動と、

自主的に実施すべき活動に内容を整理して活動全体の効率化を進めた。

現在では、法的に求められる活動項目と九電グループ環境経営推進部会の活動計画に基づくSDGs推進を中心とする項目について

それぞれ年度目標を定め、PDCAを回しながら日々の活動を実施している。

その主な活動内容は以下のとおり

 ① 電力使用量、水使用量、コピー用紙量の削減や節約、車の燃費の向上

 ② 古紙リサイクル率アップ、グリーン製品の購入促進、産業廃棄物の削減

 ③ 環境関連法令の順守

 ④ オール電化、社有車のEV化推進、地域における環境活動の推進、ゼロカーボンチャレンジ宣言の登録

これらのうち、世界的に活動が活発化するカーボンニュートラル(CN)に係る活動では、

2023年度に社有車として初の電気自動車1台をリースし、また整備部のヘリコプター用電源装置1台をバッテーリー式に変更した。

また、九電グループ全体で実施するCN活動である「ゼロカーボンチャレンジ宣言」では、

当社内で半数以上の社員が日常生活においてCNに寄与する活動目標を選択・登録し、自分自身でのCN実現に取り組んでいる。

また、その他にも2023年度下期からは毎月の電力使用量やガソリン式の社有車の燃費実績にCO2排出量換算値を付記するなど、

CNに関わる情報発信を促進して社員の意識付けを深めている。

福岡空港と当社が本社基地を置く同空港奈多地区では、これまでのところCN活動に関する全体的な活動については調査及び検討段階だが、

一旦具体的計画がまとまれば所属する事業者にも積極的な関与が求められると思われる。

そうした動きやヘリコプター業界のCN活動に乗り遅れるのではなく、むしろ先頭集団に属して行けるように引き続き研究調査と準備を推進して行く。


 寄稿文

  西空の社員が誇れるもの

営業部 満島 雄治(2023年6月末退社)

2019年(令和元年)7月に九州電力㈱から西日本空輸㈱に入社しました。

西空では「安全品質管理室」に所属し、会社の安全・品質に関して部門構成的にみてより一層の安全と業務品質向上が図れるよう組織を立ち上げ、

各部門からのメンバーとともに何とか軌道に乗ることができました。

また、それまでほぼ一人で担当していたSMS、QMS等安全及び品質に係わる業務を組織で管理する運用に変更しました。

その後、営業部に異動し、業務を行う中でお客さまから仕事を頂くことの大変さを学びました。

特に、入札において応札してくるであろう競合先の出方をどう読んでいくか、

知識や経験は当然のこととしてある種の勘のようなものも必要と感じました。

私は、西空の社員が他社に対して誇れるものは、社員の「勤勉さ」だと思っています。

30年以上死亡事故ゼロを継続出来ているのは、この勤勉さが背景にあるのではないでしょうか。

事業環境が著しく変化する状況下、変化に順応する柔軟性は必要ですが、今持ち合わせている勤勉さは今後も保有し続けてもらいたいと思っています。