受託運航の拡大については、2000年から20世紀が終わる大きな節目として、新世紀に向けての「5・5作戦(ゴーゴー)」として、
電力とその他の営業収入を「5対5」の比率に近づけるべく、活動を始めた。
一番古くから運航受託を担っているのは、報道関係(4社)で次にドクターヘリ(5箇所)となっており、1999年頃から営業活動を
開始した防災ヘリは、2010年からの運航開始となっている。
(1)報道
報道関係の受託運航については、優先契約時代を含めると一番長くから契約継続を頂いているのはFBSであり1969年までさかのぼる。
専用契約に切り替えてから現行機まで4機目の機体を運航しており、期間も機体数も一番多い。
専用契約については、TNCが1981年で一番早い。契約開始から現行機まで3機目の機体を運航している。
次いで、1998年から営業活動を続けていたRKBが2000年からの専用契約で、2機目の機体を運航している。
2002年からは、エースヘリコプターの事業撤退によりKBCとの運航を継承受託し、
福岡地区で報道ヘリを利用している民放4社機全てを当社で運航している。
(2)ドクターヘリ
1998年に厚生省からネーミングされたドクターヘリについては、病院(救命救急センター)に救急医療機材を搭載した専用ヘリを配備し、
直ちに出動できる体制を年間を通じて間断なくとることが必要となる。1999年から試行的事業が全国的には始まり、
福岡県では2000年の秋にドクターヘリ導入が決まり、次年度予算化が承認された。
具体的な事業主体となる久留米大学では、ヘリコプター常駐のためのヘリポート確保が難航したものの、
2001年4月に事業受託を決定し、2002年2月から専用機の川崎BK117C1型機が就航した。
2002年度に始まった本格運用は全国で5箇所、九州では福岡県が最初の導入となった。
その後、熊本県(2012年1月~)、宮崎県(2012年4月~)、大分県(2012年10月~)において、ほぼ同時期に運航を受託。
佐賀県は2014年1月から運航受託し、現在に至っている。
(3)防災
1999年頃から防災ヘリの事業分野へチャレンジを始めたが、
同年の山口県防災ヘリへの応札は、6社競争による激戦で桁違いの契約額で他社が落札。
その後、九州地方整備局のヘリコプター(はるかぜ号)については、当社が落札し2010年4月から運航受託。
当初はB412EPにて運航していたが、2021年9月から現行機であるAW139に更新となっている。
山口県防災ヘリについては、2019年12月からAW169への機体更新を機に当社での運航受託を開始した。
(4)その他
現在は、契約解除となっているが、九州電力が購入した機体により、
1987年1月から米国シコルスキー社製のヘリコプターS76B(レインボー号)の運航を受託し、
2001年6月までの約14年間、非常災害時の復旧要員、必要機材の輸送や要人の視察、調査等に活躍した。
また、NIMAS(長崎離島医師搬送システム)を受託・運航していた時期もあり、離島医療支援のため、
長崎県内の医師を計画的に本土から離島(上下五島、対馬など)へ派遣する送迎業務を2012年8月から実施していたが、
地域医療振興協会による事業終了に伴って、2020年3月に本業務は終了した。
北九州幹線工事終了後、数年間は、当社の基幹業務である物輸収入の減少が想定される中で、固定的収入確保による売り上げの拡大、
一層の経営安定化を目指し国土交通省九州地方整備局のヘリコフターの受託運航業務入札参入の模索が始まったのは2008年下期。
2009年度の中期事業計画の営業の確実な推進の中に「国土交通省九州地方整備局受託業務推進」を掲げた。
「はるかぜ号」の主業務は台風等の災害現場に迅速に出動し、被災箇所、被災状況把握、道路の状況等の画像を撮影し、応急対策、
復旧のための情報を関係各所に提供することである。
その業務を西空で行うためには自前のカメラ撮影要員育成が急務であった。
そのため整備部の3名を要員として育成することとし、2009年5月から教育訓練を開始した。
6月に入ると営業部、整備部がチームを組み同局機運航経験のある航空会社を訪問するなど勉強を開始した。
様々な情報収集の結果、業務の内容もさることながら、入札、落札後等手続きのために
膨大な資料の作成を短期間で整える必要があることが分かった。
当社としては初めての官公庁の大型案件で苦労したが、なんとか整えて入札に間に合わせた。
そして、2010年3月末に同局の「平成22年度航空機維持・運航業務(はるかぜ号)」を落札、4月1日からは西空クルーで運航することとなった。
さらに、機体がAW139に更新されることになり、運航クルーはイタリアでの免許取得や国内でのシミュレータ訓練などを行い、
2019年9月から新しい機体で運航が行われている。
国土交通省九州地方整備局はるかぜ号運航受託に関して
営業部 箱田 龍一
国土交通省九州地方整備局様(以下九地整)の機体(当初はベル412EP)の運航受託を、
西日本空輸株式会社が2010年3月に落札してから約14年の月日が流れました。
私が前任者から「運航責任者」を引継ぎ、業務を開始したのが2020年3月でした。
その時期は当社が板付基地(現 福岡空港)から54年ぶりに移転するのと重なり、
機体その他付随する用具を含めての大移動であったことを忘れることが出来ません。
またその年は、それまでに運航していたJA6784(ベル412EP)が間もなく総飛行時間5,000時間を迎えることから、
当時の当社運航責任者と九地整とのあいだで5,000時間点検は行わずに、その当時の「きんき号」JA6783を
九地整が譲り受けるかたちとすることが決定されていました。
これは国土交通省としても初の試みであったことから、国土交通省内でもかなりの注目を浴びたと九地整の当時の担当者から聞いた話です。
但し、当時のきんき号は5年点検を行わなければならない時期でもあったことから、
その調整にも頭を悩ませられたことが、昨日のことのように思い出されることです。
その年、きんき号は新規機体(レオナルド式AW139)が6月に納入され、機体更新されることとなっていたので、
それまでのはるかぜ号(JA6784)と入れ替わりに旧きんき号(JA6783)は5年点検を行ったあと、九地整に引き渡されることとなりました。
はるかぜ号(ベル412EP JA6784)と旧きんき号(ベル412EP JA6783)の入れ替えは、旧きんき号の5年点検が終わったその年の9月に行われました。
また、九地整との契約で旧はるかぜ号(ベル412EP JA6784)の移送手続きが終わるまでの期間、
旧はるかぜ号を保管する旨の条項により社内の状況含めて検討した結果、
航空業界の常識(?)ならば「航空機用格納庫」に保管すべきところを、一般の貸倉庫に保管することとなりました。
当然のことながら場所及び移送方法等についてまた、セキュリティの問題等いくつかの課題は九地整と協議して万全の態勢で臨みました。
ただ、この経験は今後の当社にとってもいい経験であったと今でも自負しています。
旧はるかぜ号の機体を一般倉庫に保管するにあたり、機体の搬入・搬出にも調整他苦労したことは忘れもしません。
その後2021年9月にはるかぜ号も新型機が納入されることとなり、社内の受け入れ体制を順次整えました。
まず、新はるかぜ号となる新型機であるレオナルド式AW139型につきまして、
社内でも運航・整備について受領後に万全の体制を取るべく各部署参集して検討しました。
整備士も過去の経験を考慮し他社、特に設計組み立てを行った会社への訪問及び、
同型機の実運航を行っている現場に整備士を引き連れていき、さらに習熟させることを試みました。
また、当時は新型コロナウイルスに全世界が怯えさせられていたこともあって、操縦士の慣熟訓練をどうすべきか大いに頭を悩ませる要因でもありました。
操縦訓練につきましては幸いなことに、国内でシミュレータ訓練を行う設備の完成が同一時期となり、それも含めて補うことが出来ました。
その会社でのシミュレータ訓練は当社が第1号であることは言うまでもありません。
これらの準備の結果、2021年9月に新はるかぜ号(レオナルド式AW139 JA89HA)が納入され、
九地整への引渡しセレモニーも終えての運用開始に支障をきたすことなく、初フライトを迎えた時に胸をなでおろしたのは今でも忘れません
その後大きなトラブルもなく現在までも運航できていることは、九地整の関係者様のご協力及び、
運航クルー・関係する社員の並々ならない努力の積み重ねの結果だと思っています。
今後も安全運航を継続していくよう、運航クルー及び関係する社員と力を合わせて業務を行っていきたいと思います。
旧はるかぜ号 JA6784 ベル412EP
旧きんき号 JA6783(後のはるかぜ号)ベル412EP
現在のはるかぜ号 JA89HA AW139
新旧はるかぜ号そろい踏み
口永良部調査時、海保巡視船に着船
現在、受注している山口県消防防災ヘリコプター運航管理業務について、
特に印象深い(1)AW169の新規組立業務/修理改造業務、(2)落札から運航開始までを紹介する。
(1)AW169の新規組立業務/修理改造業務
山口県消防防災ヘリコプターの機体がBK117C1からAW169に更新することが決定。
機体納入業者の三井物産エアロスペース株式会社からAW169の新規組立業務/修理改造業務を受注した。
当該業務において、仕様調整会議で航空センターを10回程度訪問した。
新機種となるAW169は新規組立/修理改造業務の経験もなかったが、
周囲の人や関係会社の支えがあって、2019年5月末に機体を納品することができた。
(2)運航管理業務の受注
2018年4月、当社が『山口県消防防災ヘリコプター運航管理業務』を受注。
機体納入後の2019年6月から訓練開始として、航空センターでの勤務開始。
訓練期間では、更新機となるAW169の訓練を行うとともに、前運航会社の朝日航洋㈱から同県防災ヘリの運航等について引継ぎを受けた。
訓練が完了し、2019年12月からAW169の運航を開始した。
山口防災
運航部 石川 圭一
消防防災ヘリに従事するようになって、私個人としては早くも15年が経ちました。
山口防災はAW169の立ち上げ段階から参加させていただいており、こちらもすでに5年目になります。
消防防災ヘリは、ざっくり言うと救助、救急、消火なんかで飛んでいます。
救助は、基本的にホイスト(電動のウインチです)を使った活動になります。
ヘリが着陸できない場所でもホイストで隊員の投入、要救助者の収容なんかができるんですね。
山岳救助、水難救助、建物からの救助と、場所や条件によって注意ポイントや難易度がいろいろ変わるのでやりがいがあります。
救急は、ドクヘリで皆さんが持ってる印象の活動だと思います。
ただし、医師は乗っていませんので要救助者を迅速に搬送することが目的になります。
早期に医師と接触させることを目的にしたドクヘリとは、ここが大きな違いだったりします。救助後の搬送も、これにあたります。
消火はおなかの下に大きなバケツを吊下げて散水します。山口県では600ℓと680ℓのバケツを使っています。
山口県は当社にとって久し振りの防災ヘリの受託となりますが、最初の3年間はいろんなことに追われて走り回って、
自分の立ち位置なんかを見失わないようにするのが大変だった記憶があります。
運航開始前の訓練期間は、隊員さんとの信頼関係やシステムを構築すべく日々のフライトやブリーフィングを積み重ねました。
運航開始した後も操縦士2名体制移行への対応のため、規定類の策定、改定などがあり、ずっとバタバタしていた気がします。
いろんな事が安定して軌道に乗ったなと感じたのは、実はやっと去年くらいからです。
もちろん悩み事は多いですが、それでも楽しくフライトさせて頂いており、隊員さんたちも良い人ばかりで雰囲気も良好、
これで人助けもできて、良い職場だなと最近つくづく思います。
若い人たちがどんどん救助ヘリを希望してやってくる、そんな80周年を迎えられると嬉しいな、と思います。
あと、食べ物が美味しいのも山口の魅力です。